社会全体で子どもの育ちを支える


 政権交代後、「次代の社会を担う子ども一人ひとりの育ちを社会全体で応援」「子どもの経済的負担を軽減」を目的に子ども手当が創設され、社会が子育てを支えることが初めて制度化されました。
 この6月、県内の各自治体議会に、この子ども手当に反対する意見書を国に提出するよう求める陳情が提出されました。不採択や継続とする自治体もある中、厚木市議会では採択となってしまいました。
 採択された意見書は、子育ては家庭でなされるべきで、子どもを社会全体で育てるという考え方は、家庭における子育ての意義を軽視し、家族制度を破壊するとの趣旨です。
 子どもの権利条約では親の養育責任は、子どもの発達を保障するためとし、子どもは家庭環境で育てられる権利があるという子どもの人権を守る立場のものです。国に養育支援を義務づけた内容であるとも理解しています。親や家庭に向けた責任論が加速することは、子育て支援策を後退させるものです。
 今、財源をめぐる議論や、「子育ては親や家庭の責任」論などにより理念が揺らぎつつあります。経済不況による生活の困窮は、物言えぬ子どもの育ちに直接影響します。例えば、学校で、月曜日の保健室利用が増えている背景に医療にかかれない子どもの存在、そして、給食費の未納問題も親の「エゴ」だけでは片づけられない貧困の問題があります。
 子どもの育つ権利を保障するならば 今後、経済的な支援だけではなく、直接子どもに届くサービスの創出や親自身が安定して子育てに関われるよう「人間らしく働く」ことを支えるサービスの拡充も必要です。
【神奈川ネット情報紙 298】神奈川ネット政策部長 前田多賀子(厚木市民自治をめざす会/市議)