社会保障と税の一体改革 問われる自治体の責任


 「年金」「介護」「医療」に「子育て支援」等も加えた総合的な社会保障改革の方向性を決める議論がはじまりました。パート労働者への厚生年金適用拡大や在宅医療・介護の充実、待機児童解消など社会保障の充実のために3.8兆円必要と言われています。その費用を年金の特例給付措置の見直しによる給付引き下げ等で捻出する1.2兆円と消費税率引き上げによる2.7兆円で賄おうというものです。
 社会保障給付費総額は、2009年には約100兆円にまで膨れあがりました。その51.8%を占める年金制度は、保険料納付率が60%を切り空洞化が進んでいます。また、第3号被保険者問題など抜本改革が待たれていました。今こそ、真に国民の立場に立った議論が望まれます。
 一方、医療・介護や子育て支援の現場は自治体であり、自治体独自の事業も少なくありません。そのため、財源確保の焦点となっている消費税率引き上げにあたっての配分を巡って、国と地方の攻防が既にはじまっています。全国市長会からは、今年3月と6月に財源拡充を求める国への要請が出されました。
 しかし、このような消費税引き上げを前提とした駆け引きをする前に、地方自治体が社会保障サービスの担い手として何をすべきか、その責任を果たす覚悟が必要です。若者の就労支援や自治体独自の生活支援サービスなど、地域の実情にあったサービスを持続的に提供していくことが今後ますます必要です。
 国で進められている社会保障制度改革の議論も、実は私たちがどのような生き方・暮らし方を選択するかが問われているのです。身近な社会保障サービスを豊かにしていくことこそが、今必要なのではないでしょうか。

【神奈川ネット情報紙 No.315視点より】
神奈川ネット政策部長 岩本香苗(ネットさがみはら)