先行する財政論 介護現場から声を上げよう


大きく見直された介護保険制度。いよいよ8月からは、一定以上の所得の人は利用料2割負担となります。すでに、特別養護老人ホームの入居者から退去の意向が示されるなど、サービスの利用を抑制せざるを得ない状況も聞かれます。また、各市町村は、2017年までに介護認定の要支援1・2を対象とした予防訪問介護・予防通所介護を「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)としてスタートさせなければなりません。しかし、来年1月から総合事業をスタートさせる横浜市でも、利用者負担や報酬単価などは明らかにされていません。

今回、介護保険制度の見直しは、介護予防給付費 4500億円を縮減したいという政府の意向に基づくものです。また、既に財務省は、次期改定に向けて、利用料2割負担の対象拡大や、要介護1・2までを対象にした給付の抑制、地域支援サービスを自費サービスへと移行する方向性も打ち出しています。今まさに始まろうとしている総合事業の財源も、どこまで保障されるのか不透明であるとの懸念を持たざるを得ません。

総合事業の担い手として、ボランタリーな地域福祉活動に期待されています。これまで様々な独自サービスで、高齢者の生活支援サービスに取り組んだNPO等からは、独自事業が総合事業に位置づけられることに期待する意見も聞かれます。しかし、保険給付と市町村事業ではサービスを受ける側の権利が全く異なります。総花的に語られる地域支援事業ですが、地域支援事業の予算には上限も設定されており、そのパイは限られています。予防の要素が強い事業も含めて各種サービスを介護保険事業会計に入れ込むやり方や、補助金に期待させ地域支援事業への懸念をかわすようなやり方は、決して良策とは言えません。自治体は、利用者への給付の抑制による影響を把握し、それを補う方策として必要なサービスやコストを提示する必要があります。

くり返される財政面からの給付抑制論に対し、高齢者の地域生活の実態を知っている現場から声をあげることが必要です。

【神奈川ネット情報紙No.358視点より】
共同代表 若林ともこ(ネット青葉)