リニア中央新幹線 公費投入の必要性検証を


 8月2日に閣議決定された「未来への投資を実現する経済対策」に、財政投融資の手法を積極的に活用し、リニア中央新幹線全線開業を最大8年間前倒しすることが明記されました。
 リニア中央新幹線は2027年に東京~名古屋開業、その後8年間は着工せず、2045年に名古屋~大阪開業をめざし、約9兆円の建設費全てをJR東海が負担することを前提としていました。国の経済対策は、この巨大な民間プロジェクトに、長期・固定・低利の公的資金を供給し、JR東海の借入金の金利負担を軽減させるものです。
 返済期限は30~40年。全線開業を早め「全国を一つの経済圏に統合し、成長の果実が全国津々浦々にいきわたる環境の整備を図る」としていますが、経済効果を生むのは10年以上先です。経済効果が都市部に偏り経済格差が拡大することも考えられます。また、南アルプスの下にトンネルを掘るなど難工事が予測され開業が遅れる事態も危惧されます。政府が言うような経済効果が見込めるのかは疑問です。
 神奈川ネットは、2012年に神奈川県が公表したリニア新幹線駅設置による経済波及効果について、1時間に5本停車、羽田―大阪間の飛行機便の廃止などの前提条件が非現実的であると指摘しました。
 2013年に神奈川県駅が橋本に決まった相模原市では、相模総合補給廠の一部返還、相模縦貫道の開通等が次々と実現したことを背景に、広域交流拠点としての大規模開発を計画しています。橋本駅前の県立相原高校の移転や、京王線橋本駅の移設、駅前広場の整備、小田急多摩線の延伸、横浜線の立体交差化と道路整備等が盛り込まれています。
 しかし、計画には予算についての説明がありません。市民説明会では、市単独事業費の試算は600億円と口頭説明がありましたが、不十分と言わざるを得ません。
 非現実的な経済波及効果を前提としたまちづくりを進めることへの不安と併せて、将来に大きな負担を残すのではないかとの懸念がますます大きくなっています。税金を投入するのであれば、国は改めてその必要性や効果を検証し、説明責任を果たすべきです。

【神奈川ネット情報紙No.371視点より】
岩本 香苗(ネットさがみはら)