軍事力ではなく市民力を強くする


 1月31日、神奈川県内の基地をめぐるピースリングツアーを実施、補給廠監視団代表の沢田政司さんのガイドで横浜線JR相模原駅市営駐車場の屋上から在日米軍相模総合補給廠を望みました。
 2014年に米軍から返還された道路用地の上には、米軍が行き来するための真新しい橋が架けられています。しかし、手前の15ヘクタールの返還地からは、環境基準を超える有害物質「鉛及び鉛化合物」が検出されブルーシートで覆われたままです。全国の基地から出る不要物が集められていた補給廠の敷地内には、何が埋まっていのか分からないのです。
 2003年、米軍から返還されたキャンプ桑江跡地(沖縄県北谷町)で、特定有害物質が検出され、さらに翌年にも米軍廃棄物や汚染が確認されました。2013年沖縄嘉手納基地跡地の沖縄市サッカー場建設現場からは、腐食したドラム缶が発見され、周辺から基準値の2万1000倍のダイオキシン類や、高濃度の発がん物質ジクロロメタン等が検出されました。度重なる有害物質の発見と長引く調査に住民には不安と怒りが広がりました。また、9億円超の除去費用を日本が負担することとなりました。
 日米地位協定により、そもそも米軍には原状回復の責任がありません。日本と同様に多くの米軍基地があるドイツでは、すでに地位協定の見直しを行い米軍は原状回復義務を負っています。住民の健康や環境への影響を把握し適切な対応を進めるために、米軍に対して原状回復や、土地の利用履歴を含めた徹底した情報開示義務を課すとともに、こうした問題に防衛省のみならず環境省の関与も可能とする制度改革が求められます。
 安倍首相は日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを強調し続け、トランプ政権下でも、引き続き強固な日米同盟の堅持をめざしています。しかし、市民の安全に関わる問題として、まずは、半世紀放置されている日米地位協定の見直しを進めるべきです。そのためには、自治体が市民と共に声をあげていくことも必要です。
神奈川ネットは、神奈川の基地を知るピースリングツアーを積極的に展開し、生活の中にある基地に向き合い、市民による人間の安全保障政策を進めます。

【神奈川ネット情報紙No.377 視点より】
市民による人間の安全保障研究会 座長 岩本 香苗(ネットさがみはら)