市民社会とともに核廃絶への道を進む


 7月7日、核兵器禁止条約が122ヵ国の賛同を得て国連で採択され、核兵器の無い世界に向け明確な決意が示されました。声をあげ続けた被爆者や世界の中小国の粘り強い外交努力にあらためて敬意を表します。
 8月6日、広島市の平和祈念式典で、松井一実市長は「核兵器禁止条約の締結促進を目指して、核保有国と非核保有国との橋渡しに本気で取り組んでいただきたい」と述べています。核兵器禁止条約は、核兵器の使用はもとより製造・保有すること、実験や移譲、威嚇を行うことも禁じており「核抑止論」を否定するものです。しかし、核の傘に守られ日米同盟の強化を掲げる日本は条約の交渉に参加せず、採択後には条約に署名しないと明言。この日の安倍首相の挨拶でも核兵器禁止条約には言及しませんでした。核廃絶の流れに逆行するような姿勢には失望・落胆を禁じ得ません。
 松井市長は平和宣言で、核兵器は自国の安全保障にとって役に立たない「絶対悪」と断じる一方で、世界の為政者に向けては行動理念として「良心」や「誠実」という言葉を繰り返しました。核兵器の使用が公共の良心に反することは論をまたないとしても、自国の政府に条約批准を迫ることができない状況は、いかにももどかしく思われます。核兵器禁止条約に参加することによって、北朝鮮の非核化にもより積極的に関与できるのではないでしょうか。
 6月には核拡散防止条約に加盟せず、包括的核実験禁止条約にも署名していないインドとの原子力協定の締結が、国会で承認されました。また、日本はすでに核兵器5千発以上分に相当するプルトニウム48tを保有しており「余剰プルトニウムは保有しない」という国際公約にも反する状況となっています。高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まり、プルサーマルによる核燃料サイクルも成り立たない現実を直視し、原子力発電に依存するエネルギー政策を根本から転換すべきと考えます。原子ムラと揶揄されるような政官業学による巨大な権力構造を打ち破ることは容易ではありませんが、長年にわたる市民社会の働きかけによって、核兵器廃絶への道が拓かれたように、私たちもまた希望を持って地道な市民の運動を広げることに努力したいと思います。現在、NGOや協同組合などとともに核兵器廃絶国際署名に賛同し署名活動も進めています。多くの市民とともに核兵器廃絶への道を進んでいきます。

若林 智子(ネット青葉)
【神奈川ネット情報紙No.383 視点より】