公文書管理条例の制定を  豊洲市場問題から考える


 豊洲市場問題で揺れる東京都。中央卸売市場担当部局は「盛り土計画を変更した時期の内部資料が残っていない」としたものの、その後一転して「建物の設計に関する資料が新たに見つかり、都の調査が不十分だった」と認めました。一方、盛り土をしない方針を「誰が、いつ決めたのか」という重要な意思決定に係る情報は、公文書としては確認できないままです。今回の経緯が私たちに投げかけるのは、「公文書は誰のものか」という問いです。

 情報公開と公文書管理は車の両輪です。情報公開では、国の法整備に先駆け、神奈川県を筆頭に全国の自治体が情報公開条例を策定しました。これに対し、2011年に施行された公文書管理法が、自治体に対して保有文書の適正な管理に関する必要な施策を策定・実施することを努力義務として課しているにもかかわらず、自治体による公文書管理条例の制定は広がっていません。

 県内で文書管理条例を制定しているのは相模原市のみで、多くの自治体では、文書管理規則等による事務処理が行われています。しかし、公文書管理法は、公文書を健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源と位置づけており、取り扱いのルールだけを決めた規程類とは根本的に異なります。文書の作成・取得、保存管理、廃棄・移管等の一連の文書のライフサイクルにおいて、常にそのことを意識した公文書管理を進めることが必要です。

 私は、2013年、鎌倉市議会で公文書管理条例の制定を求めました。以来、鎌倉市の意思決定に至る過程やその後の事業の遂行が適正であったかを検証できるように公文書として残すことを求めてきました。記録を残さなくてよい軽微な事例を最小限にとどめる文書作成基準とすることや、事業が完了していない場合は関連文書の保存年限が過ぎても廃棄すべきでないこと等、事ある度に訴えてきました。「公文書は行政のものではなく、市民のもの」です。今、行政の意識改革を促すためにも公文書管理条例が必要です。引き続き文書管理条例制定に取り組みます。

【神奈川ネット情報紙No.373視点より】
 保坂れい子(ネット鎌倉/市議)