介護保険法改正に 問われる自治体の姿勢


 改正介護保険法が、来年4月から施行されます。この改正法では、「地域包括ケアシステム」の実現に向けた取り組みを進めるとして、24時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、訪問看護と小規模多機能型居宅介護を同一の事業所で運営する「複合型サービス」を創設するとしています。しかし、前回の法改正の目玉でもあった地域密着型サービス「小規模多機能居宅介護」や「夜間対応型の訪問介護サービス」は、どの自治体も事業計画を大きく下回っており、その検証も不充分なまま新たなケア体制をどのように構築していくのか具体は見えません。最大の課題である介護職員の処遇改善への道筋も示されていません。
 
 この間、改正のたびに財源不足を心配しての給付抑制策が進められてきましたが、06年から08年度の第3期の介護保険事業状況をみると、全国的にサービス利用が計画を下回り多くの地方自治体で介護保険財政は黒字となっています。余った保険料は「準備基金」として積み立てられますが、全国の市町村の基金の合計は06年度末時点で約2140億円。2010年度末の県内市町村の基金保有額の合計は250億円となる見込みです。さらに、市町村は、都道府県が設置する財政安定化基金にも拠出しており、神奈川県に拠出された県内自治体の基金総額は、131億5000万円となっています。
 改正法には、2012年に限り都道府県の基金を取り崩せることが盛り込まれました。財源を自治体がどのように活用していくのか、その姿勢が問われます。
 
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 高齢者が、今、必要としているサービスがちゃんと提供されること、そのためにも、3年で徴収した保険料は3年で使うことが原則です。地域福祉の充実、住み慣れた地域で支えあうシステムのために、日々の生活の質を高める支援こそが求められています。
 神奈川ネットでは、昨年、配食サービスの実態調査を始め生活支援のしくみについて調査を実施しました。これらをもとに各自治体で策定が進められる次期介護保険計画への提案に取り組みます。

【神奈川ネット情報紙No.311 2011.8.15号】
神奈川ネット共同代表 若林智子(ネット青葉/県議)