NPO法人たまりば30周年シンポジウム「誰ひとり取り残さない~弱さでつながる社会へ」が開催されました。当事者自身の原因となっているものを治す医学モデルから、社会や環境を変える社会モデルへの転換について考えるものでした。
生きづらさ、出来ないという苦労の中には、今の社会が忘れていた、あるいは切り捨ててきたメッセージが込められています。学校では集団生活が求められ、そのレールから外れると落ちこぼれのレッテルを貼られ、画一性が求められて、個性や多様性が欠如していきます。性差や年齢、障害や国籍などの違いが個性となり、強みとなる時代へと変わろうとしている中、直線的な生き方・考え方では受容や理解できないことが増えます。社会全体で思考を変えていくことが必要です。
健常であり、マジョリティであることを基準としてきた社会から、だれもが弱さを持つ当事者であり、その弱さを社会全体で支えるという視点が求められています。シンポジウムでは、運動が苦手も弱さであり、それを克服する「ゆるスポーツ」の紹介がありました。走れないなら走らないスポーツを作れば良いという考え方です。弱さを克服することを追求してきた成長主義から、弱さからの発見、その回復する力を社会に求めることは、これまでのベクトルを逆にすることです。役割と関係をつくり変える時代への変革が求められています。障害や不登校、ひきこもり等、いまの社会に適合していないとされる事象から学ぶ時代への希望が見えました。
神奈川県では2016年の津久井やまゆり園事件から5年が経過し、再生基本構想に基づき、2021年秋に津久井と芹が谷に新園舎が完成しました。この間、当事者の意思決定支援を丁寧に行い、地域に住居を移された方も、そのまま施設に入所を希望された方もいます。本人がどう生きたいか、考えに沿う支援のあり方に応える社会や環境づくりが求められています。現在、神奈川県では障害福祉計画の改定作業が進行しています。障害のある人を支援するだけではなく、障害となっている弱さが誰かの強みとなり、だれもが生きやすい社会変革に繋がる視点を計画に盛り込むことを提案します。
【神奈川ネット情報紙No.437視点より】
佐々木ゆみこ(ネット宮前/県議)