後期高齢者医療制度問題への見解


グランドデザインを描く政治の責任が問われている

 後期高齢者医療制度が、スタートと同時に見直しを迫られています。医療制度改革は、先の衆院選挙時の公約の一つであり、圧倒的多数の与党の力で押し進められましたが、衆院山口二区補欠選挙の敗北を受け、福田政権は制度の再検討に追い込まれました。民主党も政局に絡め制度の廃止を訴え解散総選挙をうかがっています。しかし、低迷する各政党への支持率が物語るように、負担増の先送りや制度存続のYes、Noのみを問う手法のどちらにも市民の理解は得られません。

 社会保障制度は市民一人ひとりの生活をライフステージに応じてトータルに支えるものであり、政治の側から医療や介護、年金制度も含めたグランドデザインを示し、その上で負担への合意をつくる努力が求められます。
 しかし、今回の制度改革は、市民と合意形成することよりも医療費適正化のための制度設計が優先されました。さらに市民に直接的な影響を与える個々の保険料の徴収事務のみが先行し当事者の反発を招いています。
 この制度の運営にあたっては、自治体間格差を少なくするために広域連合(*)の設置を義務づけ保険者としましたが、本来、生活に近い自治体が市民の声を拾う窓口であり、制度へのフィードバック機能も問われるところです。神奈川の広域連合議会議員は、県下35市町村から間接選挙で選出された20人。半数の自治体は議員を選出することすらできません。制度を広域連合で運用するとしても、市民が議員を選ぶことで制度をコントロールし機能させる事が必要です。

 市民がグランドデザインを議論し制度づくりに参加するためには、自治の単位をどう選ぶかも含めて、議論の素材を提示しなければなりません。
 若い世代が未来に投資することができる社会をつくり・育てるためにも、政治の役割が問われています。

*広域連合は、広域で処理することが適当と認められた事務を、国や都道府県から権限委譲をうけて行うことができる

NET共同代表 若林智子(横浜市議/ネット・青葉)
【情報紙NET No.271 視点】