自治をはばむ「地方自治法」—直接請求と国政選挙の関係 


 「住民基本台帳の閲覧を制限する条例」の制定を求めて、厚木市で初の直接請求が行われました。有権者の50分の1以上の署名を1ヶ月以内に集めるため、7月に署名活動が開始されましたが、期間中に衆議院の解散があり、その翌日から投票日まで活動が禁止されました。
 衆院選が終わったら再開しようとしていた市民の実行委員会に、今度は何と、参議院の補欠選挙の影響で、またも署名活動が禁止されるという知らせが届きました。結局、国政選挙のために2ヶ月近くも活動がストップされる事態となり、有効署名日を残したまま、署名簿が提出されました。
 これは、地方自治法第74条第5項の規定によるもので、直接請求の参考書には、「選挙運動と直接請求のための署名収集行為とを時間的に切り離すことによって、それぞれの制度の適正な運用を期する」という趣旨が書かれています。
 しかし、自治体に条例をつくって欲しいという市民の運動が、国会の無責任な解散に巻き込まれて、不利益を被るというのは腑に落ちません。
 役所に説明を求めようと、総務省の自治行政局行政課に電話をしてみましたが、納得のいく説明は得られず、全く問題意識がないようでした。

 厚木の直接請求による条例提案は、残念ながら否決されてしまいました。
 私たちはローカルパーティとして、地域で個々の市民が抱えている問題を解決しようと、日々活動しています。今回、市民が直接解決ルールをつくることができる唯一の手段「直接請求」を行ったにもかかわらず、国の法律制度によって適正な運用が阻まれ、緊急を要する課題としての市民の訴えは、腰を折られてしまいました。
 地方分権の時代です。国からの独立性や地域からの創造性を発揮する法律制度の整備が必要ではないでしょうか。そのためにも、市民による運動を進めていくしかないと決意を新たにしています。<厚木市議会議員 山口葉子>