燃料費等の公費負担制度の見直しに向けての見解


                             2007年11月13日
           共同代表 若林 智子・檜山 智子・佐々木由美子

統一地方選挙などにおいて公費で負担される選挙カーガソリン代についての過大請求が明らかになり、連日マスコミ報道されています。
神奈川ネットワーク運動(NET)は、2007年統一地方選挙の31人の候補者について燃料費に関する調査を行いました。選管の指導に従い申請を行ったつもりではありましたが、間違いがあったと判断した候補者につきましては、すでに、返還手続きを済ませましたことをご報告するとともに(表-1)、調査の過程で、事業者と候補者との契約のあり方に問題があることも確認されましたので、以下問題提起をさせていただきます。

候補者から告示前に選管に提出される「選挙用自動車燃料供給契約書(資料-1−①)には、見込み供給量を記入することから、上限金額を記入することになっています。また、同契約書には、「請求および支払いについて」は、「請求する金額が、契約金額に満たないときは、甲(候補者)は乙(事業者)に対し、不足額を速やかに支払うものとする」とあります。神奈川県や東京都議会選挙、先の参議院選挙の同契約書にもこの文言があります。(資料-1−②、 ④)一方で、参議院選挙の公費負担のしおり「手続きの流れ(8ページ)」には、使用実績で申告することを求める補足の文言も記載されています。(資料−2
1993年、旧自治省から提示されたモデル案に則り、全国の自治体で選挙運動の公費負担に関する条例が制定されていますが、その際、本来、候補者と事業者の合意で作成されるべき契約についても国のモデル案があったことが推察されます。このように国のモデル案をそのまま取り入れた自治体選管が多い中、横浜市選管のしおりには、「燃料供給代金が横浜市に請求する額を超えるときは、甲は乙に対し、その超える額をすみやかに支払うものとする」と実態に即した文言となっています(資料1-1-⑤)。

そもそも、候補者が不足額を負担することを求めることと、ガソリン供給量を実績で申請することを同時に求めることは整合性を欠いています。公費で負担するガソリン代は選管から事業者に支払われるものですが、事業者への支払いの最終責任を候補者に求めるかのような契約文言にこそ、この制度の本質的な問題が表れているのではないでしょうか。
過大請求分の返還が続いていますが、なぜ、これほど多くの候補者が誤った請求を行いこのような混乱が生じているのか、その要因については、さらに詳細に制度を調査してみる必要性があると考えます。特に、新人候補者は選管の指導により手続き等を進めています。候補者の制度への理解が充分でなかった点は否めませんが、契約書と選管が提示した記載例が整合性を欠くなど、制度と選管の指導にも問題があったことは明らかです。

この問題は、政治家・候補者が公費を不正に受給した事案ではありません。政治とお金にまつわる不祥事が続いている昨今、それらの事件と同様に受け止められ市民の政治不信を招くという事態は非常に残念です。

今回の件を機に燃料費の公費負担制度の見直し議論が加速することを願います。私たち神奈川ネットワーク運動も、市民の政治参加を進める制度へと改正運動に取り組みます。

(表-1)

A市議候補者

当選 選管の説明会で説明されたとおり、使用証明書について上限見込み額を記入し事業者に提出したところ、事業者が実績ではなく、上限額を市に請求したため、実績と違う金額が支払われた。
B県議候補者 落選 上記市議と同様の処理を行ったため、上限額が請求された。
C県議候補者 落選 事業者から実績額が請求されるものと考え、使用証明書の金額欄を未記入で業者に渡していたが、業者が満額に近い金額で請求していたことが判明した。
D県議候補者 落選 伴走車も含めて請求できるものと思い違いをし、その車の分も請求してしまった。