高齢者の所在不明が相次いで明らかになり、これまでに所在不明とされる100歳以上の高齢者は全国で300人を超えました。その多くは、住民基本台帳から削除されていないなどの理由により発生していますが、家族と同居していたはずの高齢者の所在が確認できない事例も数多く報告されています。
高齢者の死後、年金を不正に受給していたという家族や、家を出たまま連絡が途絶えてしまったという高齢者の姿からは、貧困や孤立という不安定な生活が浮かび上がります。
警察に行方不明届けが出ている70歳以上の高齢者数は、昨年一年間で約1万2千人、無縁死3万2千人という数字は、家族の支えを前提としたセーフティネットの限界を示しているのではないでしょうか。
神奈川県の高齢者人口は、2014年度には211万人に達し、総人口の23.2%に達すると見込まれています。
地域における相談・支援のボランティアとして「非常勤の特別職公務員」と位置づけられてきた民生委員についても、高齢化が進んでいます。職務の多様化から負担が増し、なり手がいないとの声も聞きます。ボランティアの熱意だけに頼る制度には限界があります。
一方、保健・医療・福祉の相互窓口であり、高齢者を見守るネットワークの要として期待されていた「地域包括支援センター」は、介護予防プランづくりに追われています。本来の役割を果たすためには、介護保険制度の見直しと十分な人員配置が必要です。地域福祉の拠点として、地域の新たな福祉資源の掘り起こしや、ネットワーク化に取り組むべきです。
非正規労働など不安定な雇用や結婚しない若者の増加、少子化の進行など、リスクを抱えた人も急増しています。社会保障制度の見直しと、地域社会の見守り力を高める取組みが求められます。
神奈川ネット共同代表 若林智子(横浜市会議員)
<神奈川ネット情報紙300号 視点より掲載>