交通政策基本法が成立しました。交通基本法が前政権で一度廃案になり、今回改めて提案されたものです。
交通に関する施策を総合的計画的に推進するために、少子高齢化や東日本大震災の経験を踏まえ、国と地方自治体、交通関連業者や交通施設管理者の責務が明示されました。また、福祉の対象として、新たに妊産婦や乳幼児を同伴する者等が加えられましたが、地方公共交通の維持対策、交通需要の充足については、具体的な政策や財源も示されず課題を残しました。
一方、この法案は「人からコンクリート」に舵を切る国土強靭化基本法に呼応して、国際競争力を強化するために、首都圏空港や国際コンテナ戦略港湾、三大都市圏環状道路等の巨大インフラ整備を交通政策として推進するものとなっています。さらに、東海道新幹線の代替交通の必要性も盛り込まれ、多くの問題が指摘されているリニア中央新幹線推進の根拠ともなり得るものです。
今後、地方自治体には、日常生活に必要不可欠な交通施策を、まちづくりその他の観点を踏まえ、国の施策と連携を図りながら進めていくことが求められています。
国から地方への権限移譲が進められるなか、国土交通省は検討会を設置して、自家用有償旅客運送の登録権限についても、市町村や都道府県の意向調査をしました。この結果、権限移譲に積極的に取組んできた横浜市が手を挙げました。権限移譲によって、地域での柔軟な運用が可能となるのか、登録手続きや事務処理負担が簡素化できるのか、注目すべき点です。
地域交通の再生はコミュニティの再生に繋がります。これまでの実践も踏まえ、自治体・事業者・市民が参加して「交通政策基本計画」の策定を進め、「移動の権利」の確立を提案していきます。
【神奈川ネット情報紙 No.339視点より】
土山由美子(ネット伊勢原)