化学物質の子ども安全基準を


 高度成長期を経て、私たちの生活は便利で快適になりました。その一方で、大量の化学物質を生み出し、その化学物質に対応できない、また過敏に反応してしまうアレルギー疾患やアトピー疾患、更には化学物質過敏症などを患う人が増えています。
 しかもこれらの病気は、発症するメカニズムが人によって異なり、症状も違うため対症療法でしか対応できません。特に子どもの場合には、周辺環境に加え学校にある化学物質が原因で、家から出ることもできず、また学校へ通えない子どももいます。
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 NETでは3年前、県内8自治体、小中94の学校施設内の化学物質について調査を行いました。床ワックスや図工で使う油性の筆記具・接着剤、トイレの消臭芳香剤など、学校には発症しやすい化学物質が多数あることが明らかになりました。議会でもシックスクール対策の必要性を提案し、川崎市では06年にガイドラインが作成されました。しかし、学校関係者の認識はまだまだ低いのが実態です。
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 今回、ようやく環境省は、10万人の子どもを対象に有害化学物質の体への影響について疫学調査を始める方向です。原因や発生条件を統計的に明らかにする疫学の手法がとられることは、「予防原則」への一歩となることと期待します。
 
 子どもの体への影響は単純に体重比などだけで考えられるものではなく、大人より低い位置で呼吸することへの配慮、すぐ口に入れてしまう乳幼児への対策も必要です。
 今回の疫学調査が、対策先延ばしの口実とならないよう、自治体から有害化学物質の子ども安全基準づくりに取り組みます。

NET共同代表 佐々木由美子(川崎市議)
【情報紙NET No.263 視点】