国の第30次地方制度調査会では、大都市のあり方についてまとめの議論に入っています。10月15日に開催された専門小委員会の議論を受け、横浜市や政令指定都市市長会が主張する特別市(仮)の創設については、当面見送られる方向性が報じられています。横浜市の特別自治市構想、神奈川州構想といった首長による地域主権改革論は、一体何をめざしていたのか、あらためて問われます。 今、生活保護受給者が全国で211万人を超えました。戦後の混乱期を抜いて過去最多を更新中です。自治体は逼迫する財政の中で、住民のニーズを的確に捉え、限られた財源を有効に使っていくための知恵を絞る時ではないでしょうか。国では、社会保障と税の一体改革において、若者の就労支援や子ども子育て支援施策も重要な政策課題として制度化されつつあります。これらは、緊急性の高い問題であり、まさに生活に直結した課題です。身近な自治体でも、地域の実情に即した施策展開が求められています。 過去にも地方分権改革の名の下に、平成の大合併が進められ、住民自治を担保するしくみとして地域自治組織が制度化され、合併市町村以外にも取り組みが広がりました。 しかし、公選による委員を置かない住民自治組織が予算執行権などの権限を持つことについては、民意の反映という視点からは課題があります。藤沢市でも、前市長の肝いりで設置された住民自治組織である「地域経営会議」について、位置づけや議会との関係などが問題となり、年内にも見直すとされています。 お仕着せではなく、小さな自治を多様に産み育てていく地域づくりが住民自治の原点です。身近な地方議会こそが、市民の信託を受け、私たちの望む政策を進めるための制度や予算を議論し決定する場であることを再確認し、市民の政治参加を進めていきます。
【神奈川ネット情報紙 No.326視点より】神奈川ネット政策部長 岩本香苗(ネットさがみはら)