9月18日、リニア中央新幹線の環境影響評価準備書が公表され、これまで明らかにされていなかった駅や車両基地、非常口(立坑)の位置や走行ルートが確定しました。
この間、神奈川県、相模原市と県内全自治体が加入する期成同盟会は、多大な経済波及効果が得られるとして、橋本への駅設置をJR東海に要望してきました。オリンピック東京開催決定を受け、マスコミはさらなる経済効果を期待する地元の声を拾い、歓迎ムード一色の報道を繰りひろげています。人口減少社会、特に生産年齢人口の減少が問題視されている現状で、多くのリスクを抱えた巨大事業を推進すべきなのか、不安を拭うことはできません。
JR東海の説明会では、相模原市橋本に設置される駅は、県立相原高校の敷地を含む幅50m、長さ1kmのエリアを地上から掘り進む「露天掘り」による工事が予定されています。着工から11~12年後に地上部が塞がれた後、駅周辺のまちづくりが行なわれることになります。県立相原高校も移転を余儀なくされ、車両基地の建設により自然豊かな緑区鳥屋の住環境は大きく変化し、市民生活への影響が懸念されます。
さらに、JR東海から8月に出された国土交通省への要望事項の中には、リニア中央新幹線の開業に向けた環境整備が必要であるとして、不動産取得税の非課税措置の創設が盛り込まれています。巨額の駅建設費をJR東海が負担して夢の超特急が実現するならいいではないかと、リニア中央新幹線反対の声はトーンダウンしました。しかし、この税制優遇措置は建設費用の一部を税負担にすることと同様の意味を持つものです。
一時的な経済効果だけではなく、長期にわたるまちづくりへの影響、公的負担の可能性も含め、国・県・市は住民に説明責任を果たすべきです。
【神奈川ネット情報紙 No.337視点より】
岩本香苗(ネットさがみはら)