貧困から抜け出すための支援を


厚木市内で男児が育児放棄の末、衰弱死した事件が発生しました。県では、「児童虐待による死亡事例等調査検証委員会」が報告書をまとめ、複数の問題点をあげています。児童虐待防止法が2000年に施行され、事件が発生するたびに対策が挙げられ、ケースワーカーの増員や進行管理の強化などが実施されてきました。しかし、事件に至る経過を検証し、貧困や暴力、孤立した子育てなど複雑に絡む社会問題を直視してきたのか疑問です。

8月29日「子どもの貧困対策大綱」が閣議決定されました。厚労省による国民生活基礎調査によると、貧困に直面する子どもは6人に1人とされています。
神奈川県においても、2012年度の県内公立小・中学校に在籍する児童・生徒のうち経済的理由による就学援助率は15%です。
「経済的に苦しい」生活を送っている保護者には、育児負担感や不適切な養育の傾向が見られるとの報告もあります。虐待やネグレクト、不登校、さらには社会的な排除にもつながる問題です。複雑に絡む生活の困り感を調査した上で、支援策の優先順位をつけ、子どもや保護者の自立に向けたプログラムを描くことが必要です。まずは、市町村から社会的排除に繋がる課題を明らかにするべきです。

今回の大綱では、財源を必要とする経済的支援が見送られました。自治体やNPO等の無料学習支援などの継続が困難になることも予測されています。県は、大綱を受け市町村と連携して貧困対策計画を策定するとしています。
すべての子どもの生活や成長を保障するために、養育・教育・生活・就労・福祉・経済支援施策に横断的に取組む体制を整え、目標数値を明確にした計画策定を求めていきます。また、地域資源を活用した多様なセーフティネットを用意するための活動をすすめます。

【神奈川ネット情報紙 No.348視点より】
事務局長 前田多賀子(厚木市民自治をめざす会)