新しい年を迎え、今、世界は大きく変わろうとしています。自由貿易推進派のヒラリーの敗北と保護主義のトランプ大統領の誕生は、戦後のIMF体制やアメリカの産軍複合体支配の大きな転換を表しています。
では、アメリカからの輸入に依存してきた私たちの食べものはどうなるのでしょう。アメリカの政策に大きな力を持ち、遺伝子組み換えを推進して来たモンサント社は、ドイツの大手バイエルに買収されました。弱体化なのか、寡頭独占の強化なのか、両者の統合は世界を牛耳る巨大企業の誕生でもあります。欧州、ロシアではオーガニック化、nonーGM化が進んでいます。では、この巨大企業のGM農産物はどこをターゲットとしているのでしょうか。
アメリカのTPP路線は後退したにもかかわらず、日本では、TPP強行採決となりました。日本の農業、私たちの食べ物、未来のこどもたちの命にかかわる食料に、誰が責任を持ってくれるのでしょうか。いまや、自分たちの暮らす場としての”地域”を基盤として地域資源を活用し、自分たちの力で食とエネルギーの循環をつくり出して行くことが必要ではないでしょうか。それが農業、林業、地域固有の製造業、地域の食文化に根ざした商業など、地域全体を活性化し、持続可能な地域をつくる方向です。
すでに産消提携や、庄内FEC自給ネットワーク、置賜自給圏推進機構、NPO法人食と農のまちづくりネットワークなど、地域自給をキーワードとした取組みの萌芽も現れています。地域での食文化の継承と創造、人づくり、そして、共同的な市民事業の形成、それらを都市から農村に移住する人々と行っています。古くて新しい様々な市民の取組みが、都市と農村の関係を再構築しながら、これからの未来を作って行くのではないでしょうか。 シビック・アグリカルチャー、グローバルな視野に立ち地域を基盤に、食料や農業にも権利と責任を持つ「市民」。世界の変化をふまえて、運動の主体のあり方も再定義しつつ、常に新しく生まれ変わる不死鳥のような運動だけが未来を切り開いて行けると思います。
【神奈川ネット情報紙No.376 時代を読むより】
市民社会チャレンジ基金審査委員
長野大学環境ツーリズム学部 古田睦美 教授