虐待から子どもを守る地域で支える子育てへ


 少子化が進んでいますが、児童虐待の相談件数は年々増加しています。2017年度児童相談所における相談対応件数は13万3778件にものぼります。地域からの通報などで発見されるケースが増えていることも一因としてありますが、統計を取り始めた1990年度から27年連続して増加しています。
 千葉県野田市の児童虐待事件では、その実態が明らかになるにつれ、さまざまな課題が見えてきました。母親へのDVも含め、父親の暴力への依存性も指摘されています。虐待だけを捉えるのではなく、その背景にも注視していくことが必要です。
 児童相談所の相談対応件数では7〜12歳までの子どもが33.3%と最も多いのですが、虐待による死亡数は0歳児が32人と最も多くなります。背景には地域から孤立した子育てをしている家庭が増えていることが推測されます。
 神奈川ネットは、家庭で子育てしていても利用できる一時保育事業の充実を提案し、現場と連携してきました。子どもの育ちの現場からは、家庭が抱える課題の多様化が指摘されています。経済的困窮や、子育てと親の介護のダブルケア、さらには子育て中の親が病気や障害のために子育てに困っているケースなど、働く家庭だけでなく、すべての家庭への支援が必要な事例が増えています。保育指針のなかにも「保護者への支援」があり、養育を支援することは明記されていますが、家庭そのものを支援することは書かれていません。家庭が持つ課題を解決することが、安心して子育てできる環境になり、育ちを保障することになります。神奈川ネットでは、子どもの育ちを支える現場に、保護者が孤立しない支援や地域のあらゆる資源を活用したソーシャルワークの充実を提案しています。

 一時保育事業は県内全ての自治体で実施しているわけではなく、また実施していても、十分とは言えない状況です。核家族化が進むなかで、悩みを相談することはもちろん、助けを求めることすら出来ない家庭がまだまだあります。すべての子どもが利用できる一時保育の現場は、支援が必要なケースに気づく場所にもなっています。横浜市には、家庭の問題、子育ての悩みなどに柔軟に対応するために、利用前に十分に面談をしながら、一時保育を行っている現場が市民の力で運営されています。面談を通して、孤立した子育てから、地域とのつながりを持ち、助けられながら子育てが出来る環境を整えています。子育ては社会全体で支えるものです。小さな声をキャッチしながら支援につなげられる最も身近な窓口となる一時保育の充実を求め、虐待を防ぐための環境整備をこれからも提案していきます。

【神奈川ネット情報紙No.403視点より】
 政策部長 山本とも子(厚木市民自治をめざす会)