コロナ危機を乗り越えるグリーン・リカバリー


 就任早々菅首相は、「アベノミクスを継承し、一層の改革を進める」と語り、「デジタル庁を新設する」と明言しました。アベノミクスの成長戦略「ソサエティ5・0」(AIやIoTなどのデジタル技術による超スマート社会)の実現に引続き取組み、国と地方における行政のデジタル化を看板政策とするようです。

 コロナ危機で悪化した経済をデジタル化で回復させようとするのは世界的な潮流でもあります。欧州委員会が5月に公表したコロナ危機からの復興基金案にも、デジタル化の推進が掲げられました。この基金案では、環境重視の投資による経済復興「グリーン・リカバリー」が、もう一つの柱となっています。各国は今、経済の再建のために大きな借金をして財政出動をせざるを得ない状況にあります。それだけの負担をするならば、温暖化防止・脱炭素化に役立つ投資に振り向けようというのが、グリーン・リカバリーの考え方です。
 コロナ感染症によって百万人が亡くなり、世界経済は大打撃を受けましたが、より長期的で深刻な脅威は気候変動です。取るべき対策は、再生可能エネルギーの比率を高めるための投資、石炭火力からの撤退戦略に加え、企業が脱炭素化に取組むように促すことです。フランスやオーストリアでは、政府が経営悪化した航空会社に資金提供する代わりに二酸化炭素排出量の削減を求めました。日本のホンダが先頃F1世界選手権からの撤退を決めたのは、環境への取組みを最重要課題に位置付けて電気自動車の推進に注力するためです。人々がこうした企業の動きを支持すれば、加速化を促すことになります。

 全国の約150自治体が、二酸化炭素排出量を2050年までに「実質ゼロ」にすると宣言しています。県内では県と5市1町ですが、いずれの自治体も表明している具体策の実効性は不透明です。グリーン・リカバリーの視点を、国・地方、官・民を問わず広く浸透させていくことが必要です。
   【神奈川ネット情報紙No.421視点より】保坂れい子(ネット鎌倉/市議)