利用者の負担拡大と給付抑制の議論を市民参加で


 9月26日、社会保障審議会・介護保険部会において次の改定にむけ給付と負担に関する議論が始まりました。主な論点は、多床室の室料負担、ケアマネジメントに関する給付の在り方です。さらに大きな問題は軽度者への生活援助サービスに関するあり方の見直しです。要介護1・2への生活援助サービスや通所デイサービスを保険給付から外し、自治体の地域支援事業である介護予防日常生活支援総合事業(総合事業)に移すことです。
 介護財源の削減を狙い、住民主体の多様なサービス創出をめざした総合事業は2017年から始まりましたが、5年経った現在も、大半の自治体では給付サービスと同等の従前相当サービスが主流です。9月に神奈川ネットが行った県内17自治体の調査でも、複数の多様なサービスを実施して今後増やす計画を持っている自治体はわずかです。機能しているとは言えない総合事業は要介護1・2への受け皿にはなりえません。深刻な介護ヘルパー不足の中、多くの自治体では多様なサービスの担い手まで確保できない現状があります。
 また、利用者負担はこれまでの原則1割から2割になり、ケアプラン作成の有料化も大きな問題です。サービス利用の多くが単身高齢者、老夫婦世帯であり、年金収入は減額され、10月から後期高齢者医療費負担が2割に増え、さらに介護利用者負担が加わります。

 財務省が旗を振り、経済団体や企業の代表は現役世代の負担は限界だと利用者負担の引き上げを主張しますが、現役世代もいずれは年を取り、介護者や利用者として当事者となるのです。サービスを使っているのは8%といわれますが、85歳以上では50%が利用しています。増え続ける介護給付は、制度開始の約3倍の10兆円を超え、第1号の保険料も平均6000円を超えました。昨年11月閣議決定された介護職員への国費による報酬加算はこの10月からは利用者負担となります。不足する介護費用の財源をどこに求めるのか、利用者に求めていくやり方だけでは事業者も継続できません。3月24日の介護保険部会では「2025~40年の国難といえる期間、保険で支えるのが限界であれば、今以上に公費を投入する余地があるのか、公費と保険料のバランスにも踏み込んで議論すべき」との意見もありました。抜本的な財源の議論を市民も参加して進める必要があります。
【神奈川ネット情報紙No.445視点より
 加藤 陽子(座間市民ネット)】