介護保険制度〜現場を見た制度議論を


 介護の社会化をめざし2000年に制度化された介護保険。保険者は各自治体であり、地域特性や市民のニーズに合わせたサービスを行うことから地方分権の試金石と言われてきました。しかし、実態は細かいことまで国の指示まちであり自治体の独自性が生かされていません。

 例えば「散歩の同行サービス」は、家に閉じこもりぎみの高齢者が楽しみながら足腰を鍛え、地域とつながり、また介護予防にも効果があると多くの介護現場から必要性が
指摘されています。にもかかわらず、介護保険サービスとして認められていません。各自治体も国の通達を理由にはねのけつづけてきました。
 しかし、昨年末、ローカルパーティでの活動経験をもつ大河原雅子参議院議員が、現場の声をもとに国会で「ケアマネジメントで散歩の必要性を認めた場合には、ヘルパーによる散歩同行を認めるべき」と質したところ、「利用者の自立した生活を支援するための散歩同行は介護保険で認められる」との答弁がありました。
 これを受け、すでに一部の自治体では、必要なサービスとして「散歩同行」を認める方向性を打ち出し始めています。しかし県内の、ある自治体に問い合わせたところ「県に問い合わせているので少し待ってほしい」との返答。県・国の指導を仰いでいるばかりでは、保険者としての権限を生かすことはできません。

05年の改定では、介護予防の重要性が前面に打ち出され、厚生労働省主導の施策が各自治体で展開されましたが、その事業目標と利用実態は大きく乖離し問題となりました。一方、生活支援サービスは大幅に削減され、これまで利用していたケアを受けられなくなった市民からは困惑の声が出されました。

 現在、新たな改定案が議論されていますが、政治も行政も、国ではなく現場を見た制度づくりこそが求められます。
                 
                        佐藤喜美子(NET事務局長) —情報紙NET280号視点より