介護保険制度改革案に対するNET見解


介護保険制度=未来にむけて、大きくのびやかな制度へ

 昨日22日、参議院本会議で改正介護保険法が可決されました。神奈川ネットワーク運動は、この改正案には課題があると捉え、介護保険プロジェクトをもって、以下のような見解をまとめました。

                  神奈川ネットワーク運動
                  共同代表 若林智子(介護保険PJ座長)
               
1)地方分権と自治を問い直す
2)安心と合意で持続可能な制度をつくる
3)市民の実践が改革をリードする
4)施設を地域に開き、サービスの選択を通じた質の向上をはかる
5)ソーシャルサポートネットワークをつくる

1)地方分権と自治を問い直す
 介護保険制度の導入により、介護サービスは、自治体の措置から利用者と事業者との契約によって提供されるサービスへとその位置づけは大きく変化し、多様な事業者が参入しサービス量の拡大が図られたことは、高齢者福祉の向上につながりました。
 また、市町村が保険料の決定権限を持ち、地域に必要な給付を地域の実情により提供していくことも可能とした介護保険制度は、自治を拡げる制度でもあります。しかし、現状は、政省令が細部まで規定しており、自治体や福祉現場での創意工夫の余地を狭めていることが問題です。

2)安心と合意で持続可能な制度をつくる
 国の社会保障への人々の信頼は低く、そのため、世界最大の個人貯蓄を生み出し、経済不況を克服することや社会保障制度の再構築を困難にしています。
 高齢化が進めば、給付の拡大は避けられません。しかし、財政論からのみの制度設計は、介護保険制度の可能性を縮小させてしまいます。「格差」の大きい社会において、低所得者対策は必要ですが、まずは、地域の福祉を豊かにし生活に対する安心感を生み出すことで、負担増加についての市民合意をつくっていくことに力を注ぐべきです。 

3)市民の実践が改革をリードする
 市民合意をつくる上で、自治体の高齢者保険福祉計画や介護保険事業計画の策定がますます重要となります。国からは、新たなサービス体系が示されていますが、無用のしくみを創り出すことは、無駄なコストを生む事でしかありません。
 私たちは、実践から生まれた地域福祉市民計画をより具現化し、自治体計画の策定および施策の展開に市民参加のプロセスを拓くことをすすめます。

4)施設を地域に開き、サービスの選択を通じた質の向上をはかる
 改正法案では、地域密着型サービス事業者等の指定権限が市町村へ付与されることもうたわれています。しかし、「公」によるサービス量の規制や、サービスが、単一施設・単一事業者で完結する方向に進む事のないように、施設を「より開く」ことを可能にする制度とすべきです。また、市民・事業者の創意工夫を排除するような規制をできるだけ取り除き、制度の自由度を高め、利用者がサービス事業者を主体的に選択できる保障制度が必要です。

5)ソーシャルサポートネットワークをつくる
 私たちは、介護保険制度を、地方分権と自治を進めるための制度と捉えます。豊かな共助の仕組みを拡げる実践にかかわり、利用者・家族・コミュニティに暮す人々とともに地域社会に必要なソーシャルサポートネットワークをつくることに寄与します。