改憲手続きを定める国民投票法に対する見解


                   NET政策部長 佐藤秀子 
参議院選挙を前に5月14日、国民投票法(「日本国憲法の改正手続きに関する法律」)が、十分な議論が行われないまま成立しました。最低投票率の設定など重要事項も未決定のままで、18項目という付帯事項の多さがその拙速さを物語っています。法施行は3年後。その間、衆参両院に設置される憲法審査会で改正案についての審理が行われるということで、改憲論議が新しい段階に入ったとマスコミも書き立てています。

 さらに安倍首相は、国民投票法制定の一方で集団的自衛権の行使に向けた研究を行うための有識者会議を設置し、憲法9条2項の改正を実体化する動きも進めています。安倍政権の目指す方向は、米軍の世界戦力に追随するものであり、そのことは、アメとムチで自治体に基地の受け入れを迫る「米軍再編特別措置法」を23日成立させたことでも明らかです。

 しかし、私たちの市民社会は平和な社会への共感が高く、本来、このような流れをけん制する潜在力があるはずです。国民投票という重要な権利の行使について、護憲か改憲かという視点を狭めた議論が進められ政争の具とされてきたことが、市民議論を遠ざけてきたのではないでしょうか。

 今、不安を持たざるをえない年金問題を始め、政治が責任をもって対応すべき課題は山積しています。護憲か改憲かの2者択一を問うより、私たちは市民生活の課題をどう解決するかから発した市民立法、市民立憲の議論ができる社会をめざし、努力を続けます。