利用者本位の情報公表制度を


          山本裕子(県議/厚木市民自治をめざす会)
 介護保険サービス事業者の情報を、利用者が主体的に選択できるようにするために「情報公表制度」が2006年度から始まりました。これにかかる費用は、手数料を都道府県条例で定めて事業者が負担し、指定機関に委託するというシステムです。神奈川県では指定調査機関10法人の2人1組の調査員が調査業務を行い、社団法人かながわ福祉サービス振興会が情報公表業務にあたっています。
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 制度スタートから2年、神奈川ネットワーク運動(NET)の事業者への調査から、調査項目が多すぎる、手数料が高すぎる、老老介護の高齢者がインターネットを見られるのか等々、意見が寄せられました。一方、公表されたデータを見ると、通り一遍の情報で、果たして利用者にとって必要な情報の提供になっているのか大いに疑問です。
 昨年の県の決算特別委員会で、この公表制度について質したところ、2月議会で介護保険条例の改正が提案され、訪問介護サービスは2万9300円に減額、これが早速4月1日から施行されています。しかし、こんなに簡単に値下げできること自体が、おかしなことです。
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 そもそも、福祉サービス情報は利用者の適切な選択を支援するために、各自治体・地域での顔の見える関係で受発信されることが望まれます。地域包括支援センターからの情報発信や相談機能の充実も必要です。また、サービスの質を保障するには各施設を地域に開き、苦情申し立てできる第三者機関など利用者本位のシステムを検討することが必要ではないでしょうか。
 介護保険制度は、本来、利用者本位、「選べる福祉」を基本理念としているのです。質の向上につながらない公表制度は意味がありません。
 (情報紙NET 272号 視点に掲載)