「外国人地方参政権」〜川崎の実践を活かしたい


 川崎市は、韓国・朝鮮人市民が多く住む街です。強制連行の歴史もあり、「在日」と言われる人が、民族差別による政策・施策に対して運動を起こし、地域社会に共に生きる市民としての地位を獲得してきました。
 特に桜本地区では、民族保育を行う保育園が作られ、卒園する子どもたちが在日朝鮮人として差別されることなく学校生活を送ることができるよう働きかけ、「川崎市在日外国人教育基本方針」が制定されました。さらに、奨学金受給資格の国籍条項の撤廃など、差別の解消に向けた運動で権利を獲得してきました。

 1996年には、外国籍の人も市政に参加することを目的とした、「外国人市民代表者会議」が条例で設置されました。しかし、その後10年以上経ち、課題も見えています。会議から市政への改善を提言しても、市長は「尊重」するに留め、なかなか取り入れられないことが多くなりました。また、外国人市民の中にも、「会議」の存在すら知らない人も増えています。あらためて誰もがまちづくりに参加できる権利を手にすることが必要です。
 
 一方、政党助成金や地方議会選挙の議員数を決定する際は、国勢調査の数が母数です。外国人市民は数字にだけカウントされているのです。
 かつて女性が参政権を手にしたように、当事者が政治参加することの必要性は、既に認められてきた事実です。

 地方自治法の自治体の役割に「住民の福祉の増進」が謳われています。住民とは、その自治体に住所を有する人で、外国人市民も含まれます。歴史を検証しても、当事者である外国籍市民が直接政治に参加できる地方参政権の付与は当然のことであり、共に住みやすい地域をつくるためには、その声を活かす政治が求められています。
                     佐々木由美子(川崎市議会議員・ネット宮前)    <情報紙NET295号視点より>