認定NPOへの新寄付税制の存続を


 首相の諮問機関である政府税制調査会が、租税特別措置法の全面見直しの方向性を打ち出し、認定NPOへの税制優遇が無くなる危険性が生じています。
 神奈川ネットは、生活の課題に密着した市民の課題を社会化し、非営利によるサービスを市民とともに地域に生み出しセーフティネットを築いてきました。NPOは、介護や子育て支援、教育、まちづくり等、公共だけでは補いきれないサービスを提供し、まちをつくりかえるための原動力となっています。東日本大震災後は、NPO法人をはじめ公益法人等が福祉分野やまちづくりへ参加し、市民による活動領域はさらに広がりました。
 2011年6月には、第3次改正NPO法が成立し、認定NPOの取得緩和、寄付金控除、新寄付税制の施行により大きく制度が転換しました。NPO法は3年ごとに見直されます。2015年の改正に向け提案事項をまとめる中、法人税の実効税率を引き下げる場合の穴埋め財源としてNPO法人を始めとした公益法人の課税を強化しようとしています。
 新しい公共を担うNPO等の活動を広げるためには、税金の使い道を自分たちが決められる寄付制度の存続が必要です。新寄付税制の施行からわずか2年でその効果を判断することは拙速すぎます。これらの問題を多くの市民と共有し、見直しを撤回させる行動が必要です。さらに、出資型非営利活動を促進させる施策や、NPOバンク法の制度化により市民セクターが独立性を保持しつつエンパワーメントできる仕組みが求められます。

 NPO法成立から16年、日本の社会構造も大きく変わり始めています。すでに人口減少社会の入り口にあり、人々の暮らしや働き方の多様化も進んでいます。安倍政権が打ち出す経済優先の社会は、格差が増幅され貧困や生きづらさが個人の責任に転嫁される危険性があります。市民社会の資源や活力を活かし経済優先主義によらない豊かさを模索すべきです。不足する税収を補うための手段としての税制改革ではなく、社会保障制度全体の改革を視野にいれた、市民社会を強くするための制度づくりをめざすべきです。

【神奈川ネット情報紙 No.344視点より】
事務局長 前田多賀子(厚木市民自治をめざす会)