誰もが安心して暮らせる地域社会をつくります ~横浜市カジノ誘致の市民合意は作れていない~


 

 8月22日横浜市長がカジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する方針を発表しました。

 カジノについて、政府は、海外からの富裕層を主なターゲットにした事業展開を想定し、日本人についてはマイナンバーカードなどで本人確認をして入場回数の規制をするなどの案を示していますが、ギャンブル依存症対策としての効果は疑問視されています。

 内閣府が2016年に15~29歳6000人を対象に「子供・若者の意識に関する調査」を行いました。そのなかで10年後の将来像として「自分の収入で暮らせる仕事についている」の問いに42%の子どもが「そのように思えない」と回答しています。IR整備推進会議のヒアリングで、久里浜医療センター院長の樋口進医師は、依存症の危険要因の一つに「早期のギャンブル暴露」を挙げています。夢や希望を見いだせない社会にカジノを作れば、若年層を含む多くの人がギャンブルに走り、依存症や格差の拡大を招くのは想像に難くありません。昨今では、本人の意思だけでは依存症からの脱却は困難であるという認識が広まっていますが、そもそもギャンブル依存症に対して社会の理解は進んでいません。治療や救済の基盤も少なく、理解もされにくい現社会で、ギャンブルに人生を狂わされる本人・家族に対する支援はまだまだ困難だらけです。

 これまで、林横浜市長はカジノ誘致に対しては「白紙」と表明してきました。今年に入り行われた「新たな戦略的都市づくり検討調査(その4)」の報告書の説明会資料では、カジノに前向きな事業者や有識者等からのヒアリングのみであり、依存症治療や支援している現場の声や、カジノからは経済効果は生まれないと訴えている事業者からのヒアリングは行われず、一方的な情報で検討が進められていると言わざるを得ません。

 さらに2018-2021の横浜市中期4カ年計画についてのパブリックコメントの特に意見の多かった項目は統合型リゾート(IR)に関する意見であり、否定的な意見が94%に上っていました。多くの市民はこの事業に対し反対、もしくは不安を抱えています。カジノ誘致を白紙としていた横浜市長がいまするべきことは、多方面からの意見をしっかり聞き、市民の不安に向き合い、不安を無くすための説明責任を果たし、さらに対話を重ねることです。そして市民の代表である横浜市議会においても議論を重ねるためにも、誘致の撤回を求めます。

 そして神奈川ネットワーク運動は、自分の将来に夢や希望を持ち、失敗しても再チャレンジができ、多様性を認め合う社会をめざしています。「これまでにない経済的効果」の側面には「これまでにない闇」があることは明らかで、めざすべき社会にカジノは不要です。人と人が繋がり、認め合い、地域で誰もが自分らしく働き豊かに暮らせる地域づくりにこそ、これまでにない経済的効果を生み出せると考えています。