市民の手に政治をとりもどす


 1月8日、横浜市会は、市民が19万3193筆の署名と共に直接請求した「カジノの是非を問う住民投票条例案」を否決しました。

 直接請求に至った要因は、カジノ・IR誘致に関する市長及び議会の政策決定と市民意見との乖離、つまり、代議制民主主義の機能不全です。カジノ・IR誘致に根強い反対がある中で、市民に対して是非を問うことなく事業を推進する手法への異議申し立てでした。ところが、直接請求を受けた林文子市長は、条例案提出に際して「代表民主制が健全に機能しているといえる本市において、住民投票を実施することは、これまでの議論の棚上げを意味する」との意見を表明しています。

 代議制民主主義において、私たちは選挙によって選ばれた政府に政策決定を委ねることになりますが、それは、あくまでも「信託」するのであって「委任」ではありません。つまり、最終的な権利は市民の側にあります。賛成、反対を問わず、極めて中立的な制度「住民投票で決めたい」と訴えた市民の声を否定することは、明らかに信託された権限を逸脱する行為です。政治を変え、政治をひらいていくことが必要です。

 1980年、合成洗剤を追放する条例が、神奈川県下で22万筆の署名を集め、各自治体へ直接請求されましたが、議会はこれをことごとく否決しました。私たちは、この運動が契機となり代理人運動をスタートさせました。そして、代り合いながら、政治への参加を広げ、生活者の手で必要なルールをつくることを模索してきました。

 昨年は、各地で国家プロジェクトとして推進される政策の是非を問い代議制民主主義の機能不全を訴える運動が展開されています。茨城県の「原発県民投票」、品川区の「羽田新飛行ルート運用の賛否を問う区民投票」などが直接請求され、自治法の定めを大きく上回る署名が集まっています。

 今回の直接請求の経験を、参加・分権・自治・公開という市民自治の原点を確認する機会とします。ネットワークを広げ市民社会を強くする政治に取り組みます。2021年、横浜市長選挙、並びに総選挙を迎えます。市民の手に政治をとり戻す次の一歩を踏み出します。
     【神奈川ネット情報紙No.425視点より】青木マキ(ネット青葉)