高齢者の外出支援策充実を


 ブレーキとアクセルの踏み間違いによる高齢者の交通事故報道が相次いでいます。警察は免許証の更新時に認知症・運転技能検査の実施や運転免許証の返納を呼びかけてはいますが、自主返納を促すだけでは限界があります。高齢世帯が増えており、家族の援助が得られない場合、通院や買い物などへの車の運転は、生活を維持するために避けられない状況があり、対策が必要です。

 そこで、神奈川県内でも多くの市町で実施しているのがコミュニティバスやデマンド型タクシーです。コミュニティバスは、一例として地域のニーズに合わせて地域住民と協働してコースや料金を決め、市民が運転などの協力をし、行政が補助金を出して運行しています。デマンド型タクシーは、交通不便地域に限りコースを規定し、決められた乗降場所を巡回運行するものです。しかし、バス停まで歩けない、買い物の荷物が重い、坂道が厳しいという声もあります。

 単独での移動が困難な人々のためには、福祉有償運送があります。市町村や非営利団体などが主体となり、地域の運営協議会の登録を経て事業を行います。県内には2021年3月31日現在約226の事業所があり、通院や買い物などの個別の要望に対応しています。2015年、介護保険制度の一部改正によって社会福祉法人の公益的な取り組みが責務とされ、昼間は空いているデイサービスの送迎車を利用して、送迎や買い物に利用する事例もあります。利用者からは外出し、交流することで健康寿命の延伸につながっていること、運転ボランティアからは高齢者を見守るという地域づくりに役立ってきたという思いがあるようです。

 私は10年程前からNPOの外出支援サービスメンバーとして活動しています。伊勢原市内には福祉有償運送が5団体ありますが、当団体の課題としては、運転メンバーが少なく、ニーズに応えるのにギリギリの状況です。秦野市では、毎年2回、受講料無料で認定ドライバーの養成研修を実施し、修了者は各事業所のドライバーになったり、ボランティア団体を立ち上げています。しかし、小規模団体が多く、車両の維持費や駐車場代などの捻出に苦慮しています。

 今後、確実にニーズが増えると思われる福祉有償運送を充実させることが必要です。地域の生活課題は、行政の施策の充実とともに、市民が積極的に関わることで地域の安心感が醸成され、さらなる課題解決の糸口にもつながります。
【神奈川ネット情報紙No.435視点より】
     浜田順子(ネット伊勢原)