民主主義の実践と地域づくり


参議院選挙中の安倍元首相銃撃事件に対して「民主主義への挑戦」と当初、多く報道されました。しかし、宇野重規東大教授が、民主主義について「参加と責任のシステム」と定義し、今回の事件は「民主主義の敗北」としたのに着目すべきと考えます。宇野氏は、民主主義とは古代ギリシアで一般市民が民会に参加して平等な立場で発言し、最終的に一票を投じて意思決定を行ったことに由来し、民主主義の本質は、市民自ら問題解決に当たることで当事者意識を持つことにあるとトクヴィルの言説から示しています。また、民主主義は市民が可能な範囲で公共に携わり、責任を分かち持つことが重要とし、政治における代議制民主主義、選挙などの制度だけを指すのではなく、公共的な議論を行う議会の意思決定と、市民の参加と責任のシステムを不断に結びつけていくことの必要があるとしています。  強権国家の脅威が深刻化するなかで、格差・貧困が広がり、自由と民主主義の価値をいかに広げていくのかが問われている時代になっています。欧州や南米を中心として、地域主権を大事にし、地域の人々が主体的にかかわって命と環境を守る政治をつくる運動、ミニュシパリズム(地域主義)が世界で広がっています。  神奈川ネットは、これまでそれぞれの地域で、子育て支援や高齢者の生活支援、環境問題の解決のために、大勢の市民と共に必要とされるサービスの創出等まちづくりを担ってきました。私たちのこの参加と責任による活動は、民主主義の実践です。  さまざまな困難を抱える時代にあって、私たちも地域でのセーフティーネットづくりをさらに進めていく必要があります。それが「参加と責任のシステム」民主主義への信頼につながり、政治への信頼をつくっていくことと考えます。