労働者派遣法改正 一億総活躍の影に


安保法制の国会審議が大詰めを迎えていた9月11日、審議も十分尽くされないまま改正労働者派遣法が強行採決され、9月30日に施行されました。参議院での可決・成立からわずか29日というスピード施行であり、10月1日施行予定の「労働契約申込みみなし制度」(違法派遣に対する制裁制度)を回避したいという経済界の意向が透けて見えます。その間に実施された改正法案に対するパブリックコメントもわずか3日間で締切られました。126万人にものぼる派遣労働者にこの制度改正が十分周知されたとは言いがたい状況です。
今回の「改正」では、専門26業務の枠が取り払われ、派遣期間は一律3年間とされています。派遣元の企業は、制度を使って、もう必要がないと考えた派遣労働者に対しては、3年で雇い止めができ、他方、使い続けたいと考える派遣労働者については、部署を換えて使い続けることができます。派遣社員は一生派遣から抜け出せなくなる可能性があります。また、一部の企業では、年収においても「固定残業代」という形で残業代が込みになっているケースもあり、使い捨てを前提に給与体系が組み込まれているともいえます。
現在、子育てをしている若い世代にも経済的困難が広がっています。経済的困難を解消するためには、多様な働き方が選択できる必要もあります。しかし今回の改正により派遣は拡大し、人間らしい働き方までも壊しかねません。
企業にとって使い勝手の良くなった派遣法により派遣労働者は益々増え 、企業が使いにくい労働者は、さらに解雇され、より多くの労働者が失業する可能性もあります。   失業、不安定雇用・所得の問題に対し、神奈川ネットは、働きがいがある人間らしい仕事=ディーセントワークの実現に向けて持続可能な社会モデルづくりに取り組んでいます。多様な生き方・働き方をお互いに認め合い、不利益を被る市民の小さな声に耳を傾けることこそが必要です。

【神奈川ネット情報紙No.361視点より】
事務局長 前田多賀子(厚木市民自治をめざす会)