横浜市立保育園民営化をめぐる訴訟の判決に対して控訴の提起の議案が賛成多数で可決されました。控訴にあたっては市民の税金を使うわけですから、私は、新たな争点を提示できなければ、控訴はおこなうべきではないと質しました。しかし、東京高裁で何を争われようとしているのか市長の答弁からは、汲み取れませんでした。
横浜地裁の判決では、横浜市の拙速な対応の違法性を認めて賠償金の支払いを命じているわけですが、公判記録を見ると、当時の福祉局長が「父母の意見があっても横浜市の方針は変えない」と発言されていたことや、部長が「4/1日の民営化が最大の目標」と発言されています。法人選考委員の中でも、また、民営化された保育所を運営する予定であった法人の理事長からも、「性急すぎる、責任もってやれない、民営化を延期してほしいという」意見も出されています。それでも、この意見を内部で検討し、やはり、市長の判断で、方針は変えないということになったというようなことが当時の担当課長によって証言されています。判決では、民営化の実施時期について、協議の余地がなかった点が問題だとされたわけですが、市長はその点について、認められることはありませんでした。
非常に厳しい財政状況におかれていた横浜市としては、早い時期に施策転換を目指していたと思われます。横浜市から提出されている準備書面にも、「民にできることは民に」という記載がありました。私も、その事を全て否定するものではないのですし、民が「公正・公平」に競い合うことも必要だと思います。が、この保育所民営化のプロセスに関しては、そういった視点が語られていながらも、移管法人に対して、不自然なほど、充分過ぎる配慮がなされていたり、移管先の決定の経緯も釈然としません。突詰めていくと、誰のためのなんのための「民営化」なのかが良くわかりません。
民営化に際して、保育所の建物は移管法人に有償譲渡されているのですが、譲渡に際して最も評価額が高かった柿の木台保育園です。ここは、評価額の1/4 4700万円で譲渡されています。
移管先の法人である「あすみ福祉会」は、2004年度に保育所購入費として4850万円の借入れを行なっていますが、このうち4000万円は社会福祉協議会からの借入金です。
この借入れは、社会福祉事業振興金という融資制度にのっとり行なわれていますが、社会福祉協議会が、金融機関から資金を借入れ、無利子で貸し付けるものです。その規定によると、金融機関から借り入れた資金に生ずる利子は「横浜市補助金」を持ってあてるとされています。
情報公開請求によって明らかになった選考委員会の議事録には、選考の過程で、選考委員から、「あすみ福祉会の財務状況が気になる、前年に園舎を立て替え、積み立て金を崩しタイミング的には気の毒だ、ここが移管を受けるのはかなりの負担になってくるのではないか」と指摘しています。法人監査においても、5年間に渡って継続的に要改善事項が指摘されているにも関わらず未改善だったといったことも報告されています。
本来、社会福祉事業振興金は、福祉施設の整備費、NPO福祉保険サービス拠点整備費に活用されていましたが、奇しくも、2004年1月から、あらたに、「保育所購入費」というものが対象に加えられ、適応施設としては、横浜市から有償譲渡を受ける保育所となっています。貸し付け限度額は4000万円でした。市長はこれを従前からあった制度だと答弁されましたが、私が問題としたのは2004年1月に改定された「保育所購入費」問いう部分です。再質問では、「急に言われても答えられない」との答弁でした。
横浜市の土地をただで貸し備品ももちろんただ。建物は、評価額の1/4で譲渡し、その資金調達の制度もつくってあげて、20年間その借入金の利子を横浜市が払ってあげるという、そもそも、このやり方が、民でやれることは民でやるといえるのでしょうか?