住基ネット「横浜方式」〜自治・分権の実践モデルが消える〜


 住基ネットがスタートして4年。接続しないことを選択した83万人の市民は利便性や効率性を放棄するリスクを、また、接続することを選択した市民は安全性におけるリスクをそれぞれ負ってきました。横浜市が、全員参加を前提とし、安全性が確認できるまでの間の緊急避難的な措置としてスタートさせた住基ネット「横浜方式」は、結果として、「市民の自己決定権」の行使という自治・分権モデルへと進化を遂げました。

 しかし、この間も、総務省は、横浜方式が今秋稼動する住基ネットシステムを利用した年金業務に支障をきたす恐れがあるなどとし、住基ネットへの全員参加を促していました。しかしながら住基ネットを使った年金業務に関して、一方の当事者である社会保険庁の見解は「支障なし」として総務省見解と一致していません。このことについて、横浜市ではいまだ事実確認ができず、市民への説明責任も果たされていないまま、総務省の方針に沿うかのように、住基ネット安全宣言が出され、横浜方式から全員参加へと方針転換が行なわれました。

 浅薄な議論により、歴史に名を残したかもしれないであろう、市民自治・分権の実践モデル・横浜方式が消滅するのは、あまりに残念です。
 市長には、その価値を認識し横浜方式の継続にむけて再考することを求めます。

 私たちは、またもや、「悪法も法なり」と発言しなければならない市長の姿、国や官僚に振り回されるみじめな自治体の姿を突き付けられました。
 自治と分権を進めるのは、「国に追従する政治」ではありません。課題を持ち政治に触れる市民が増えることこそが政治改革です。
 地域の政治を豊かにし、市民自治が息づく分権社会への道を拓く実践を重ねていくしかないのです。

  神奈川ネットワーク運動横浜 共同代表 若林智子
                   (横浜市会議員)